老人ホームと保育所・幼稚園の併設(幼老一体)/高橋コラム

2016/03/04

「老人ホームと保育所・幼稚園の併設(幼老一体)」

数年前から議論されてきた、老人ホームと保育所・幼稚園などの併設に関して改めて考えてみました。当初から老人ホームと幼稚園は管轄が異なる(老人ホーム:厚生労働省、幼稚園:文部科学省)ため難しいとされており、事例としては同管轄の老人ホームと保育所がいくつか存在します。しかし、同じ厚生労働省の管轄とはいえ、関連法規や担当局が異なるため容易に併設できるものではないようです。ハード面では双方の基準を満たす設備が必要となり、新設するにあたり莫大な費用がかかります。子どもと大人とでは、背丈も行動も異なるので当然ですね。

では、幼老一体とするメリットはどこにあるのでしょうか。実際に運営している施設によると、一般的な老人ホームや保育所とは圧倒的にプログラムやシステムなどのソフト面が異なります。言い方は非常に悪いですが、老人ホームを姥捨て山のように捉えている子世帯もいるようで、入所された方々は目標や生活意義を失い、老化が進む一方です。たまに子と一緒に訪れる孫の成長を生きがいにしてる方もいらっしゃいます。介護と育児を同時期に抱えるというのは、非常に困難で共働きでは到底できません。近年、老人ホームなどの老人福祉施設内での虐待問題がニュースでも取り上げられ入所に不安を抱える世帯も多いようですね。老人ホーム内に保育所を設けることで、入所されている方と子どもに接点が生まれ新たな生きがい、日々の活力になります。ある施設では、2つの驚くべき効果があったようです。車椅子で生活していた女性が、子ども達と交流していく中で自ら立ち上がり歩き始め、いつも気難しくキツイ表情だった男性が子ども達と会話をしていく中で表情が穏やかになりました。

通園する子ども達にも多くのメリットがあります。核家族化が進み祖父母世帯との交流が少なくなるこの時代に、親よりも年配の世代と交流を持つことで、子どもだけのコミュニティでは学べない社会性や協調性を養うことが可能です。最初はお年寄りと接することに戸惑いを隠せない子どももいるようですが、慣れ親しむ中でお年寄りを敬う気持ちや優しさを持ちます。そして何より、お年寄りが持つ知識を子ども達に学ばせ、伝えていくことが出来ます。時には保育士さんもお年寄りからアドバイスをもらったりするみたいですね。介護の場に子どもがいるだけで、介護士さんが癒されることも相乗効果といえるでしょう。

来たる2025年には30万人の介護士不足問題に直面するといわれ、現状の保育士不足問題に合わせて福祉職員不足への対応策が急がれます。「介護+保育」という新たな職種・資格が必要になると筆者は考えており、建築面においても現状分離している「児童福祉施設」と「老人ホーム」を併設した「複合型福祉施設」という新たな用途設立が必要です。幼老一体型の施設には子どもと接する入所者の要介護度の範囲設定など様々な課題が残されていますが、少子高齢化が進む現代において時代に適した施設運用は必須です。


「筆者」
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也