2024年度少子化対策部門賞

シン・子育てファミリー・サポート事業
北九州市子ども家庭局
従来のファミリー・サポート事業をリニューアル。
子育て世帯はワンコインで利用できるようになったほか、民間企業等と連携した預かり場所の拡大やタクシーを活用した送迎支援体制の強化にも取り組み、安全・安心で、きめ細やかなサービスを提供。
LINEの活用により事務負担も軽減し、活動しやすい仕組みとなっている。
団体紹介
福岡県北部、県内最大の面積を有する政令指定都市。
人口転出が課題の一つでしたが、令和6年は60年ぶりに転入超過。子育て世帯の転入も超過に転じています。
子ども家庭局では、シン・子育てファミリー・サポート事業や第2子以降の保育料無償化において独自の取組みを行うなど、子育てしやすいまちを目指しています。
なぜこの取り組みを始めたのか?
北九州市では、平成10年から「ファミリー・サポート事業」を実施し、これまで着実に支援の輪を広げてきましたが、近年は、共働き世帯等の増加により支援ニーズが高まりがある中、支援してくださる方のライフスタイルの変化もあり、支援体制の強化という点で課題が見えてきました。
そこで、子育て世帯の皆さまや支援してくださる会員の声をお聞きしながら「より利用しやすく、活動しやすい」仕組みとするため、事業のリニューアルを行いました。
活動内容と効果
2024年10月のリニューアルでは、①利用料金及び報酬額の改定、②民間と連携した預かり場所の拡大、③タクシーを活用した送迎支援体制の強化に取り組みました。
利用料金を1時間800円から「ワンコイン・500円」に引下げたことにより、運用開始後半年間で、回数は、前年度比20%増となりました。
また、会員宅以外の場所で、複数会員が一緒に活動できる場を用意したことで、一人で活動をすることに不安を感じていた休眠会員が再稼働しているほか、報酬額増額(一部を市が負担)が「やる気up」にもつながり、提供会員も着実に増加してきています。
そのほか、タクシー利用(1,000円まで市が負担)で、運転に不安があるという方も安全・安心に送迎支援活動ができるようになったことや、LINE活用により事務負担軽減が図られたことで、提供会員からは、「活動しやすくなった」との声をいただいています。

▲シン・子育てファミリー・サポート事業を支えている皆さん。会員同士は信頼の絆で結ばれています。

▲保育科を有する西南女学院大学内に預かり場所を設置。教授や保育士を目指す学生さんにも歓迎いただいています。

▲認可外保育施設ママトモ魚町での預かり支援の様子。複数の会員が一緒に活動できて安心です。

▲会員の不安を解消。市が利用クーポンを発行し、利用しやすく。プロのドライバーによる安全・安心な送迎を実現しています。

▲シンボルイラストは、地元の絵本作家・はしもとえつよさん作。事業を支える提供会員の活動をイメージして描いていただきました。

これからの展望
2024年10月のリニューアルに加えて、2025年度は、子育てと仕事の両立で負担が大きくなる育休復帰前後の期間をサポートするため、職場復帰を控えた会員について、復帰前2ヶ月から復帰後1年の間、「預かり」でも「送迎」でも、最大24回(1回2時間)を無料とするよう拡充を予定しています。
このような取り組みを実施される方へのメッセージ
事業のリニューアルにあたっては、認可外保育施設や大学、タクシー会社など民間企業等と連携したほか、北九州市出身・在住の絵本作家がシンボルイラストを描いてくださるなどの協力もありました。
また、会員の事務負担軽減に向けては、デジタル関係部署を交え、横断的な体制で検討するなど、行政の内部・外部を問わず、まさに「オール北九州」で仕組みを整えました。
ファミリー・サポート事業におけるニーズや課題は、それぞれ異なる部分もあるかと思いますが、地域にマッチしたより良い仕組みを作っていくためには、「地域の力」を最大限に活用していくことが大切だと思います。

審査員総評

- 審査員長:山縣 文治
- 大阪総合保育大学 特任教授
- 市の独自予算で、タクシー料金の補助、利用料の減額、報酬のアップなど、利用者にも提供者にもメリットがある方向になっている。タクシーによる送迎は特に珍しい。支援場所も個人の家だけでなく、公共空間を確保することで、提供会員の拡大施策も組み入れられている。

- 審査員:島田 妙子
- 一般財団法人児童虐待防止機構オレンジCAPO 理事長
- 自宅での預かりや自家用車での送迎は、やはり負担が大きいと思いますので、全国でも真似してほしい制度です。また利用料金、報酬、タクシー代補助等、依頼会員、提供会員ともに安心できる取り組みだと思います。

- 審査員:LICO
- 作家・ブロガー・子育てアドバイザー
- 依頼者にも、提供者にとってもきちんとメリットと安心を得られる素敵な制度だと思います。自宅預かりだけでなく公共施設の協力もあるのは、(心理的にも)風通しが良い環境で子どもを見てもらうことができ、子どもを預けている人にとっても、預かる人にとってもメリットがあるなと感じました。

- 審査員:竹田 こもちこんぶ
- 5児の兄弟の子育てネタでTikTok・執筆など多方面で活躍中
- 子育て世帯に必要なはずのシステムかつ全国各地に昔からある制度なのに利用者が中々増えない。そんな悩めるファミサポの「報酬や送迎」そして「報告のDX化」といった難点に先駆けてメスを入れてくれた改革。北九州市に続き、盛り上がれ全国のファミサポ!!

- 審査員:安木 麻貴
- (一社)日本子育て制度機構 育児制度アドバイザー しんぐるまざあず・ふぉーらむ・神戸ウエスト代表
- ずっと前から行われているのに、なかなか広まらないファミサポ。どちらの地域でもこちらのような行政の後押しを期待します。サポートを利用した方の数を増やしていくことが後々の支援者の拡充にもつながりますね!