2024年度最優秀制度賞

えびの電子工業株式会社

頼れる夫の愛妻手当制度

えびの電子工業株式会社

男性の育休取得による「産後ケアへのレスキュー」を推進!
2024年4月より国の制度に先駆け、減少する給与の1ヵ月分の1/3をボーナスで補填する制度。
男性の両親学級への参加と28日間以上の産後パパ育休の取得が条件。他社に勤務する夫が取得しても、自社の社員である妻に1ヵ月分の補償をサポート。

団体紹介

大手製造業メーカーの協力企業として宮崎県えびの市に本社を置き、製造拠点は6か所。主に電子部品や自動車部品を生産。社員数は578名。(男性198名、女性380名。2025年3月末時点)
「地元で 家族と 自分らしく」を掲げ、ジェンダー平等に基づいた子育て支援のサポートや人材育成に力を入れている企業。

なぜこの取り組みを始めたのか?

現在の二代目社長が、3番目の子供の出産時(2019年)に初めて男性の育休を2週間取得した際、『産後の新生児育児は眠れずに休めない。夫が頼れる一生のパートナーとして、妻をレスキューするべきだ』と強く実感した。更には、育児についての学びが足りずに家族から「でっかい赤ちゃん」と呼ばれてしまった失敗談から、「社長の様になるな」という教訓がきっかけ。

その後、ある男性社員に子供が生まれた際、「出産で会社を休むのは世間体が悪い」と父親(赤ちゃんの祖父)から言われ、育休ではなく「有休による隠れ育休」を取得した親孝行な男性社員がいた事。

そして、宮崎県主催の男性育休を推進する講演で「仕事の方が楽だった」と訴えた際に、社内外より「うちの旦那や他の中小企業には、産後ケアへの理解が無さすぎる」という女性の嘆きが多く寄せられ、自社だけ良ければよいのではなく、世間全体への啓蒙活動が重要である事を痛感した事から、この取り組みを始めました。

活動内容と効果

2024年4月に「頼れる夫の愛妻手当」として制度を開始してから、1年間における女性社員の出産は3件(男性は0件)。
制度の周知と夫の会社への理解を勧める活動を行いましたが、残念ながら「人手が不足している」や「取りたくても取れない」という状況から、他社で働かれている夫の男性育休の取得までには至れませんでした。

地方の中小企業においては、未だに男性の育休を取得しづらい状況が根強く残っており、まだまだ産後ケアの大切さや、男性の育休取得推進への理解が不十分であると痛感しています。

パートナー産後レスキュー制度の第1条

▲パートナー産後レスキュー制度の第1条

制度の参考資料①

▲制度の参考資料①

制度の参考資料②

▲制度の参考資料②

制度の参考資料③

▲制度の参考資料③

制度の参考資料④

▲制度の参考資料④

社長が育休を取ったときの申請書類

▲社長が育休を取ったときの申請書類

育休取得を推進する管理職の集合写真

▲育休取得を推進する管理職の集合写真

女性社員の仕事風景

▲女性社員の仕事風景

3人の子を持つ親4名と知事との記念写真

▲3人の子を持つ親4名と知事との記念写真

社長の育休取得時

▲社長の育休取得時

これからの展望

新たに政府の補助が始まった今年度においても、独自の支援策を継続する事に決定。政府の補助(社会保険の免除)に加えて、独自に賞与における上乗せ支給を実施します。2025年4月からの今年度においては、既に出産予定が7件ありますが、このうち2件において、他社で働かれている夫が男性の育休取得を予定されています。

今後も粘り強く「最低でも1か月間の産後レスキュー」の重要性を訴え続けながら、女性の産後の回復が早まる事、夫婦仲が高まり子沢山な社員が増える事などを目指して、取り組みを継続してゆきます。

このような取り組みを実施される方へのメッセージ

この度、ベスト育児制度賞を頂きましたが、日本で子育てや出産への理解が更に進み、無意識の偏見が無くなる事を願っています。

企業は、国が法律で定めているから仕方なく男性にも取得させる…のでは無く、『男性の育休は人材育成への投資』として捉えて頂けたら。結婚して子供を持つ事での様々な経験は、人を大きく成長させます。管理職や経営者で、『家庭を大切にする夫は、会社でも活躍する人材』という考えに共感をして頂ける方が増えて頂けたら、とても嬉しいです。

家庭では、夫を『頼れる一生のパートナー』として、遠慮なく頼ってもらえたなら。女性は命を身に宿して実感しながら、妊娠中の定期健診などで新生児の育児について学べます。ですが男性には体の変化が無く、学ぶ機会が特にありません。出産した後に、「妻は動けず・眠れず・教えられず」となるその前に。ぜひ妊娠中から二人で学び、夫婦ともに産後うつにならず、大変だけどとても幸せな新生児育児を夫婦で満喫できたなら。夫が「でっかい赤ちゃん」と言われる家庭が無くなる事を願っています。

規程や申請書そして参考資料を公開していますので、ぜひご覧下さい。この「頼れる夫の愛妻手当」が、子供の元気な声が増えるお役に立てたら嬉しいです。

審査員総評

山縣 文治
  • 審査員長:山縣 文治
  • 大阪総合保育大学 特任教授
  • 女性従業員の他事業所従事配偶者への眼差しは素晴らしい。男性の育児休業取得に際しては、国制度もこれくらい頑張ってほしい。
    HPをみると、本制度に限らず、子育て支援、社会貢献の優良企業であり、このような企業を宮崎県以外の人にも知ってほしい。
島田 妙子
  • 審査員:島田 妙子
  • 一般財団法人児童虐待防止機構オレンジCAPO 理事長
  • 「自社のブランドは優秀な社員」社員やその家族のことのことを心から大切にしている企業ですね。心と身体が健康であってこそ。
    不安要素を少しでも解消してもらえる良い制度だと思います。社外の配偶者にも適用されるのはありがたい。全国の企業にも広がっていただきたい。
LICO
  • 審査員:LICO
  • 作家・ブロガー・子育てアドバイザー
  • 両親学級に参加しただけでなく、「取るだけ育休」は許さない!という姿勢に好感を持てました。
    形立てとって終わりではなく、真の「育休」とは何なのか、誰のための休みなのか、きちんと前提条件の促しをされていて素敵だなと思いました。
LICO
  • 審査員:竹田 こもちこんぶ
  • 5児の兄弟の子育てネタでTikTok・執筆など多方面で活躍中
  • 「え!そこまでやってくれちゃう?!」と思わず言いたくなる制度。このインパクトこそ、男性の育休推進が中々進まない今の日本社会に必要なことかもしれない。
    えびの電子工業の根本にある「自社の社員を大切にすること」が間違いなく生きている。いい会社だなぁ。全国に広がれ〜!!
LICO
  • 審査員:安木 麻貴
  • (一社)日本子育て制度機構 育児制度アドバイザー しんぐるまざあず・ふぉーらむ・神戸ウエスト代表
  • 民間の方が制度をしっかり学んで、ここまでアイデアを出されている点に敬意を表します。パパの育児がちゃんと家庭のなかで機能することできっと夫婦関係も良くなるはず!
    「取るだけ育休」ではなく「両親学級」への参加の条件も面白いですね!
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