2025年度孤立・困難抑止部門賞

ママと赤ちゃんのための夜カフェ『ヨナキリウム』

ヨナキリウム(WHALE TAIL)

ヨナキリウム(WHALE TAIL)

夜にオープンする少し不思議なカフェで、ベビー用品がそろい、ママたちが一息つける場所もある、夜に行き場のない子育てに苦悩する親たちが過ごせる秘密の空間。

その非日常を、現実の場として形にすることで、ママたちの心のよりどころを作る、夜間の新しい子育て支援の形。ママと赤ちゃんのための夜カフェ『ヨナキリウム』

団体紹介

WHALE TAILは、新潟市西蒲区を拠点に、地域資源を活かした持続可能な場づくりを通じて社会課題の解決に取り組む団体です。現在は新潟市の補助金事業として、夜間の子育て孤立に着目した「ママと赤ちゃんのための夜カフェ ヨナキリウム」を運営しています。

なぜこの取り組みを始めたのか?

夜間の子育ては、外部との接点が途切れやすく、孤独や不安が深まりやすい時間帯です。
夜泣きや授乳が続く中で、心身ともに余裕を失い、「この状況がいつまで続くのか」と感じながら終わりの見えない長い夜を過ごす親は少なくありません。
一方で、既存の子育て支援は日中に偏っており、「最もつらい時間帯に頼れる場所がない」という構造的な課題がありました。
本取り組みの原点は、代表自身の育児経験にあります。第一子の育児中、夜泣きによる睡眠不足と孤独感の中で、web漫画『よなきごや』に出会い、夜間に安心して立ち寄れる場所の必要性を強く実感しました。
「夜中でも安心して行ける場所がある」という世界観に触れたことで、「現実にも必要な仕組みだ」と確信しました。
しかし当時、そのような場所は存在しておらず、「ないなら自分でつくる」という想いから、夜間の孤立を未然に防ぐ「予防型支援」として本取り組みを開始しました。

活動内容と効果

ヨナキリウムは、毎週水曜日22時から翌6時まで開放する母子限定の夜間カフェです。主に乳幼児を育てる母親や妊娠中の方を対象に、夜泣きや不安を感じやすい時間帯に安心して過ごせる環境を提供しています。
施設内は「夜の水族館」をコンセプトに設計し、照明や空間演出によって心身の緊張を緩められる環境を整えています。利用者は静かに休むことも、誰かと会話することもでき、「無理に何かをしなくていい居場所」であることを大切にしています。
また、子育て経験のあるスタッフが常駐し、必要に応じて傾聴や育児のサポートを行うほか、専門的な支援が必要な場合には行政や関係機関へとつなぐ役割も担っています。

2025年7月の開設から2026年3月までの約8か月で延べ86名が利用し、リピート率37.5%、利用者満足度100%を記録しています。利用者からは「ヨナキリウムが開いているという事実だけで励まされる」「自分一人ではないと感じられて、育児の心強い支えになった」といった声が寄せられており、深夜帯における心理的負担の軽減と孤立の予防につながっています。
夜間の強い孤立や慢性的な疲労は、産後うつのリスク要因の一つとされています。本取り組みは専門的な支援を提供する場ではありませんが、安心して立ち寄れる居場所として機能することで、そうしたリスクを未然に軽減する「入口」としての役割を担っています。
新潟市の補助金事業として行政と連携しながら運営されており、従来の支援では届きにくかった時間帯に対する新たな支援のあり方として機能しています。

0歳~2歳のお子さんを連れたママさんたちが集まりました

▲0歳~2歳のお子さんを連れたママさんたちが集まりました

赤ちゃんの隣でお母さんも一緒にいただきます

▲夜間でもヨナキリウムに来ればみんなで子育てをします。

海の中のように落ち着いた店内で思い思いに過ごしています。

▲海の中のように落ち着いた店内で思い思いに過ごしています。

日中に定期的に行う内覧会の様子です。

▲日中に定期的に行う内覧会の様子です。

保育士、助産師、現役ママさんなど心強いスタッフが一緒に見守ります。

▲保育士、助産師、現役ママさんなど心強いスタッフが一緒に見守ります。

これからの展望

今後は本取り組みを一過性のものにとどめず、「夜間子育て支援モデル」として体系化し、他地域へ展開可能な仕組みとして確立していきます。
具体的には、運営条件・空間設計・関係機関との連携方法などを整理し、地域ごとの特性に応じて導入できる形に落とし込みます。
現在も他地域からの問い合わせや視察が増えており、すでに展開に向けた動きが生まれていますが、まずは自地域における持続可能な運営モデルを確立することを重視しています。
将来的には、新潟市内各区への展開をはじめ、全国各地で夜間に安心して立ち寄れる場所が存在する状態を目指します。
夜間の子育て支援が特別なものではなく、社会インフラとして当たり前に存在する状態を実現していきます。
また、補助期間終了後も継続可能な運営体制の構築を視野に入れ、持続可能なモデルとしての確立を目指しています。

このような取り組みを実施される方へのメッセージ

子育て支援は「困ってから支える」だけでなく、「孤立しない環境をつくる」ことが重要です。
特に夜間は支援が届きにくく、個人に委ねられやすい時間帯ですが、小さな居場所があるだけで大きな安心につながります。
大規模な仕組みでなくても、既存の場所や資源を活用しながら始めることは可能です。
重要なのは、「何を提供するか」だけでなく、「どのような在り方で関わるか」という姿勢だと考えています。
地域ごとに無理のない形で取り組みが広がり、それぞれの場所に合った支援が生まれることが、結果的に多くの家庭を支えることにつながります。
運営側の私たち自身も、「できる範囲で、できることを継続する」ことを大切にしています。
誰かを支える取り組みが、関わる人にとって無理や負担になるのではなく、続けていける形であることが、結果として長く安心を届けることにつながると感じています。

夜の時間に、ほんの少しでも「安心して子供と一緒に過ごせる場所がある」「一人じゃない」と思える場所が増えていくことを願っています。

審査員総評

山縣 文治
  • 審査員長:山縣 文治
  • 大阪総合保育大学 特任教授
  • 子どもの泣き声さえ外部に漏らしてはいけなくなってしまった都市社会。まるで母をいじめるかのように、昼はよく寝て、夜は起きて泣く子ども。それに共感してくれる仲間がすぐそばにいる空間。「思いっきり泣いてもいいんだよ」。この声が、母にも子どもにも届いているような気がする、新しい取り組みです。
島田 妙子
  • 審査員:島田 妙子
  • 一般財団法人児童虐待防止機構オレンジCAPO 理事長
  • 夜間という支援の手薄な時間帯に着目し、親子が安心して過ごせる居場所を創出した点を高く評価。非日常の演出を通じて心の負担を和らげ、孤立しがちな保護者に寄り添う新たな子育て支援モデルとして、今後の広がりに期待したい。
LICO
  • 審査員:LICO
  • 作家・ブロガー・子育てアドバイザー
  • 夜泣きでしんどいママが、実際に誰かに会いに行ける場所を作るというのは新しい取り組みだと感じました。街が寝ている中、自分だけが起きているって辛いけれど、誰かが一緒にいてくれる場所があるというのは、ママの救いになると思います。
LICO
  • 審査員:竹田 こもちこんぶ
  • 5児の兄弟の子育てネタでTikTok・執筆など多方面で活躍中
  • 「夜泣き」という出口の見えない八方塞がりの状況を自宅で、時にはひとりで、乗り越えるしかなかったお母さん達に、夜カフェというポップかつ型破りな発想で救いの手を差し伸べる。立ち寄って愚痴を吐けるスナックがそこかしこにあるならば、こんな風に夜泣きに悩むお母さんがフラッと入れる店がもっとあっていいはずだ。
LICO
  • 審査員:安木 麻貴
  • (一社)日本子育て制度機構 育児制度アドバイザー しんぐるまざあず・ふぉーらむ・神戸ウエスト代表
  • どうして子どもの泣き声はあんなに母親の心に響くのだろう。産婦人科ではあんなにお母さんがいたのに、泣いている子どもを胸に、「私ひとり?」の感情が高ぶってしまうのも夜中・・・。子どももつらいが、親もつらいこの時期。運営は大変かと思いますが、広がって欲しい取り組みです。
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