待機児童問題と子育て環境/高橋コラム

2016/03/02

「保育園落ちた日本死ね」

とあるお母さんのブログが話題です。人気ロックバンドのボーカルや、情報番組でも支持をうけ国会でも質疑にあがるなど社会問題にまで発展しています。実際、待機児童問題は年々深刻になっており、待機児童数は4万人を超えるといわれます。これらの問題に対し、各自治体では保育所数を増やすなどの対策に取り組んでいますが、保育所数増加に対して保育士が圧倒的に不足しています。匿名で書かれたこのブログ記事が取り上げられていますが、TwitterやFacebookでは多くのお母さんが似た内容を書き込んでいます。このような民の声に対し、保育士の対応改善、企業内保育所の完備が急がれます。

ではなぜ近年待機児童問題がここまで深刻化しているのでしょうか。1980年代、90年代のデータによると待機児童数は現状と比べて少なくありません。筆者も当時保育所に入所しておりました。家に帰ると近所に住む祖父母や隣人宅でご飯を食べたり面倒をみてもらうのが日常で、当時の友人もそのような環境で育っています。現状の子育て環境に問題があるのではと筆者は考えています。核家族化、都市化が進む中で、母親1人で子育てをするという単一化された環境が増加傾向にあるのが現状です。子育てによる母親の孤立、それに伴う育児ノイローゼや虐待など、子どもに関する問題は連鎖傾向にあります。母親は子どもが生まれて初めて小さな子どもと接するケースが多く、それゆえに抱えるストレスも増えていきます。本来日本の子育て環境は家族や地域で子どもを見守り、親と子が一緒に育っていくというものでした。時代の変化に環境がついていかず、全てのストレスを母親と子どもが受けている状態です。多くの自治体で母子に対する相談窓口が増えていますが、裏を返せば相談する母子が増えているということですね。

沖縄の子どもの貧困率が30%を超える割合であるとニュースで報道され問題視されていますが、筆者自身は沖縄の子どもの貧困率よりも、次点で多かった大阪の貧困率を危惧しています。収入や生活保護受給率で統計された結果ですが、沖縄の子育て環境は上記で述べた「地域で子どもを育てる」という環境を保っています。それに比べ大阪は都市化が進み母親の孤立による子どもに関する問題が多くあります。

子育てをするにあたって、保育所数の現状や自治体の制度やサービスを予習しておくのも大事ですが、子育てをする環境を見直すことも重要ですね。


[筆者]
育児助成金白書
育児制度アドバイザー
高橋智也