ネウボラを知っていますか?各地に広がる子育て世代包括支援センター

2016/05/30

フィンランド発祥の「ネウボラ(助言の場、の意)」を参考に、日本でも各市区町村で母子を支援する動きが広がっています。日本では「子育て世代包括支援センター」として展開されているこの仕組みの特徴は、妊娠中から子どもが就学するまでの相談を一つの窓口で切れ間なく対応できるところです。

2015年度までに138市区町村で設置された同センターは、現在国会に提出されている母子保健法改正案に基づき、2020年度中に全国展開する予定で、今年度には251市区町村に拡大する予算が確保されています。

本家フィンランドでは、1920年代から、小児科医や看護師らの有志によってネウボラが始められ、約20年後に国の制度として認められました。現在ではほぼ100%の子育て家庭が利用していて、虐待などの家庭の状況や健康状態を把握し子育ての不安を取り除くのに効果的だとされています。

[フィンランドでのネウボラの効果]
・児童虐待による子どもの死亡率が減少した
・ほぼ100%の妊婦が妊婦検診を受けるようになり、リスクの早期発見・予防につながっている
・一人の専門家が継続してサポートするので相談しやすく、母親の孤立解消にもなっている
・利用者のデータを長期間(50年)保管するので、後々のデータ採集にも重宝する
・家庭内の問題に事後対応する公的な支出が減った

[日本版ネウボラで期待できること]
・妊娠から子育ての相談窓口が一つにできる
・専門家による的確なアドバイスが受けられる
・各家庭の問題をいち早く見つけられる
・貧富に関わらずどんな家庭でも無料で利用できる

現在フィンランドの出生率は1.71と高い水準にあり、子どもの虐待死件数もネウボラ施行後から激減しています。
一方日本では出生率は1.46と低く、家庭内暴力や児童虐待も後を絶ちません。児童虐待によって生じる社会的な経費や損失は少なくとも年間1兆6000億円にのぼるとの試算もあり、健やかな子育ての支援をすることは日本にとっても重要な課題となっています。